離婚に迷いがある時や相手が離婚に応じない時、または、衝動的な離婚を避け、これからの結婚生活を継続させる為の冷却期間として、別居を考えてみるのも意義があると思います。
正常な夫婦関係を維持できなくなったわけですが、すぐに「別居=離婚」と結びつけてしまうのではなく、今後の夫婦関係を継続させるか、あるいは離婚して夫婦関係を解消させるべきかを冷静に考える貴重な時間と捉えるべきです。
難しいことですが、別居する時には、別居の理由を相手に知らせる必要があります。勝手に家を出てしまったり、無理やり相手を追い出したり、相手からの復縁・同居の要求を拒否し続けた場合は同居義務違反となり、離婚原因の「悪意の遺棄」に該当することになります。
但し「離婚のための別居」と告げると話がこじれてしまい、離婚協議が長期化してしまうことも考えられますので、なるべく「離婚」という言葉は使わず、結婚生活を継続させる為の冷却期間と主張した方が良いと思われます。
「離婚のため」と主張してしまうと、既に夫婦関係は破綻しているとみなされ、仮に別居中に相手が不貞行為をしても、不貞行為を理由に離婚請求できなくなる可能性もあります。
配偶者の暴力がひどい場合は、命に関わる問題です。
子供がいると、学校や幼稚園・保育園の事もあり簡単に別居というわけにもいかないと思いますが、緊急避難的に別居をすることをお勧めします。
相手が冷静に話し合いができず、暴力を振るう場合には、2人きりでの話し合いは避け、弁護士等に今後の交渉を依頼した方がよいと思われます。
別居理由を手紙や電話で伝えても構いませんが、手紙の内容によっては離婚調停・裁判で不利になってしまうこともありますので、注意が必要です。
別居中だからといって夫が妻子に生活費を渡さないのは法律的にも許されません。
例え、夫からの暴力を避ける為や、離婚の協議中・裁判中の別居だとしても、婚姻費用分担の義務は生じます。夫が家を出て行った場合でも同じです。
夫婦には、お互いの生活レベルが同等になるように助け合う「生活保持義務」があり、婚姻から生ずる費用を、収入その他の一切の事情を考慮して、分担する義務があります。
別居中でも夫婦の婚姻が継続している限り、婚姻費用の分担義務が生じますので、夫が生活費を渡さない場合は、妻は今まで通りの生活費を渡すよう求めることができます。
また夫婦間に未成熟の子供がある場合、たとえ別居期間中でも子供に対する扶養義務は免除されません。子供の福祉が最優先されますので、婚姻破綻の有責割合などは度外視して考えます。
家を出て別居する方は、自分の特有財産は自由に持ち出せますが、夫婦の共有財産、実質的共有財産を勝手に持ち出すと、離婚訴訟になった場合に悪影響を与えてしまう事も考えられます。ただ別居中に相手が夫婦の共有財産、実質的共有財産を処分することも考えられますので、自己名義の預貯金だけではなく、相手名義の預貯金、財産も把握しておきましょう。勝手に処分されそうな場合には、家庭裁判所に財産の処分を禁止する仮の処分を申立てることもできます。
生活費(婚姻費用)の分担額は夫婦の同意で取り決めますが、協議で決まらなかったり、夫が話し合いに応じない場合は家庭裁判所に「婚姻費用分担請求の調停申立」を行うことになります。調停で合意が成立しなければ、家庭裁判所の審判となり、審判により婚姻費用の分担額が決定します。
ただ別居が長期化する可能性があれば、双方とも経済的に苦しくなりますので、ある程度は仕事をされた方が良いと思われます。
別居して転移があれば基本的には住民票を移す必要があります。その際、別居先が子供が通っている、学校、幼稚園、保育園の学区外だった場合は、転校の問題が生じてしまいます。子供が転校を望んでいなければ、住民票を移さず別居先から学校、幼稚園、保育園に通うこともできますし、例え住民票を移しても、学校によっては学区外からでも通えるよう相談に乗ってくれます。住民票を動かせない事情がある場合でも学校側に相談してみましょう。
子供の学校、仕事先の問題がなければ、やはり実家、もしくは実家の近くのアパート、マンションが一番良いでしょう。経済的にもいろいろな支援が期待できると思われます。但し、配偶者(夫)からの暴力を避けるための別居の場合は、相手が逆上する可能性もありますので、実家へ逃げ込むより、婦人相談所や民間の相談センターを利用する方が安全だと思われます。頼る実家や親族もなく、生活が困窮している場合も婦人相談所や母子生活支援保護施設に相談に乗ってもらいましょう。
結婚生活を継続させる為に一時的に別居する場合でしたらウィークリー、マンスリーマンションなどを利用する方法も良いでしょう。また配偶者の実家へ別居して、配偶者との間に入ってもらうのも良いかもしれません。
別居の原因が自分にある場合(有責配偶者)は、あなたからの離婚請求は原則は認められません。特に夫婦間に未成年の子供がいたり、離婚後に相手方が経済的に厳しい状況に置かれる可能性がある場合などには、離婚請求は認められていません。
但し、別居期間が同居期間より長期であるとか、子供が独立して生計を立てているなど、既に夫婦としても実体が無く、婚姻関係の回復の見込みの無い場合には離婚請求を一定の枠内で認める判例もでています。と言っても、一定の別居期間で離婚を認めるという規定はなく、別居期間が8年で離婚が認められたケースもありますし、同じ8年でも認められなかったケースもあります。
はやり有責配偶者からの離婚請求が認められるのは簡単ではないようです。
別居中など、夫婦関係が既に破綻している状態で、その後に配偶者が異性と性的関係を持った場合は、この性的関係と、夫婦関係の破綻には因果関係は認められないので、「不貞行為」を理由に離婚請求はできないこともあります。「不貞行為」を離婚原因として、配偶者に慰謝料を請求しようとお考えであれば、夫婦関係が既に破綻しているとみなされないように、別居中に「離婚」の言葉を出すのは止めたほうが良いでしょう。
また別居中に勝手に離婚届を出されそうな場合は、予め本籍地、又は住所地の市区町村役場に離婚届の不受理申出を提出しておきましょう。